3月に横須賀市汐入町で東京都品川区に住むタクシー運転手が殺害された事件で、米第七艦隊・イージス巡洋艦「カウペンス」のナイジェリア系乗組員(22)が県警に逮捕され、先月24日、強盗殺人と銃刀法違反容疑で起訴された。容疑者逮捕のとき、シーファー駐日大使は「心から遺憾の気持ちを伝えたい。大変に申し訳なく思っている」と陳謝する一方で、日米地位協定の見直しについては「捜査では日米が全面協力し、地位協定が非常にうまく機能した。だからここで改正する必要はない」と、本気で反省しているとは思えない発言をした。高村外務大臣まで同様の発言をし、大変残念な思いである。起訴前の米兵の身柄引渡しは、日米地位協定の運用改善合意に基づくものであるが、私は独立国として根本的には地位協定そのものを見直さねばならないと強く思っている。
今回の事件の持つ意味を、私たち日本国民は改めて良く考えなければならない。なぜ米兵が、横須賀基地から脱走できたのか、在日米海軍の兵士管理はどうなっていたのか、脱走した米兵の存在を、国、県、市、警察など関係する日本の行政機関がなぜ把握していなかったのか。容疑者は殺害後に一旦基地内に戻りキャッシュカードで現金を下ろしているということであるが、なぜそのようなことが可能であったのか、殺害後も平然と基地を出入りして電車を使い都内に移動し、友人女性宅にいたなどということを、なぜ可能にしてしまったのか。本来、軍人は国民の安全を守る存在であり、民間人を殺害するなどありうべからざることである。ましてや日本の民間人を殺害するなどということは、日本に対する重大な主権侵害、同盟国に対する冒涜であり、一切許すことは出来ない。
今回の事件を受けて日米間で、在日米兵の脱走が判明した場合、米側が直ちに日本側に情報提供することで基本合意した。しかし、脱走兵との峻別が困難な「行方不明者」や「無許可欠勤者」についての情報提供は見送られ、しかも「無断で30日以上部隊を離脱」しなければ「脱走」と認定されないので、「直ちに日本側に情報提供する」と言っても、事実上脱走状態になってから、最短でも一ヶ月もかかってしまう。一ヶ月間、脱走兵は野放しで自由に日本国内を歩き回っているのだから本当に恐ろしいことである。しかし私がある意味でそれ以上に恐ろしいと思ったのは、これまで日米間でそんな程度の合意すらなかったということである。
1日、神奈川県総務部から「在日米海軍による犯罪再発防止策について」と題された紙が、県議会総務政策常任委員である私のもとに送られてきた。30日に行われた松沢知事とケリー在日米海軍司令官との会談で、ケリー司令官から、犯罪再発防止策について知事に対して説明があったとうことで、以下のような趣旨が書かれている。
「今回の事件を受け、問題点を検証し、次の通り再発防止策をとることとした。海軍の全員と軍属全員が一体となって取り組むことを約束する。」とし、以下6点の具体策を提示した。
1. 暴力は絶対に許さない。その予防策として、CAREプログラムを取り入れ、教育と訓練を徹底する。暴力の兆候を見逃さない。〈Combined(統合した)、Anti-Violence(反暴力)、Reflection(反省)、Education(教育))
2. 反暴力の訓練を一般軍事訓練に組み込む
3. 米兵全体の素行状態を、上司がチェックリストで把握し、問題がある者にはサポートやカウンセリングを実施する。
4. 改善が見られない場合には外出制限などの措置をとり、重大な場合は本国送還あるいは除隊させる。
5. 空母ジョージ・ワシントンにもこのプログラムを伝達する。
6. 日米合同委員会合意に則り、脱走兵情報を日本政府に提供する。
どれも今更言うまでもないことであり、まさかこれまでこんな程度の取り組みもしていなかったのかと思うような至極当たり前のことが羅列されているだけである。誰もが不思議に思うはずであろうが、問題の根本は、日常兵士が容易に基地の外に出ることが出来るところにある。外出チェックは極めて厳格な条件のもとで行われるべきである。基地から外出するということは、日本国への入国に等しい。こうした事件が繰り返されるたびに、米国は、兵士への教育をより厳しくするよう配慮するというが、学生ではあるまいし、兵士に対する教育で、「反暴力」など教え込まねばならないようでは本当に先が真っ暗である。教育で解決出来るわけがない。基地への出入りのチェック体制を厳格にし、万が一行方不明になった場合には、即時日本政府に情報提供し、警察等関係機関との速やか連携のもとに迅速に行方不明者を捕捉すること、そして、松沢知事が要望したように、軍人等の事件・事故防止対策等の協議の場として、日米合同委員会の中に、米軍基地を有する地方公共団体の代表者の参加する「地域特別委員会」を設置することも必要である。
各地で繰り返される米軍兵士による重大な犯罪には本当に憤りの気持ちで一杯である。昨年、多くの基地を訪問し、米軍関係者とも親しく話しをさせていただいた。このような事件が繰り返されれば、同盟関係にもひびが入ってしまう。心して、二度とこのような痛ましい事件を起こさぬ強い決意を持ってもらいたい。
2008年05月04日
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