2008年07月16日

静岡県立静岡がんセンターを訪問〜「健康長寿日本一」への取組みを見る

静岡県立がんセンター.jpg
静岡県立静岡がんセンター
 昨日は、静岡県立静岡がんセンター(駿東郡長泉町 615床)の現場訪問をさせていただいた。大変ご多忙な中を、山口建総長を始めとして、古田副院長、斉藤事務局長、天野県産業部参事と、病院運営に携わる幹部の方々から大変有益なお話を伺った。
 静岡県立がんセンターは、「がん」克服を21世紀の県民の課題ととらえ、静岡県のがん対策の中核を担う高度がん専門医療機関として整備され、平成14年9月から診療が開始された新しい病院である。山口総長は「患者に尽くす世界一のがんセンター病院を目指している」と明言し、徹底した患者中心のがん専門医療を展開している。
 同センターは、公立病院としては特筆すべき点がいくつも上げられる。個室病床が48%を占めている点などはその一つである。抗がん剤治療の場合、一晩中吐き続けたり、髪の毛がばっさりとぬけたりすることなども珍しくない。こうした厳しい副作用を伴う治療は、患者本人やご家族の負担を考えると、出来るだけ個室で受けていただきたいと思う。しかし現状では、多くの病院で個室の整備率はまだまだ低い。現在の制度では、個室利用料は全額自己負担である。外来での抗がん剤治療も増えているが、それは比較的副作用の少ないレベルに止まる治療が多いのが通常である。本格的な抗がん剤治療を受ける場合、私は個室利用を「医療上の必要」があるとみなし、将来的には保険適用出来るようにすべきであると思うし、何より病院が個室整備を進める必要があると考える。こうした点から考えても、同センターは、患者の立場を考えた病床整備をしっかり行っていると言える。
 ホスピスが2棟50床と整っている点も非常に評価できる。神奈川県立がんセンターはわずか17床である。神奈川県内全体でも10病院191床しか緩和ケアのためのベッドがない。この病院では、年間およそ1000人が亡くなり、そのうち400人余りをホスピスで看取るということである。今後、急速に高齢化が進行し、益々ホスピスの必要性が高まることを考えると、まだまだベッド数が足りないということであったが、本県と比較すると羨ましい限りである。終末期を精神的にも肉体的にも出来るだけ負担を軽く過ごしていただくためにも、神奈川県内でホスピスをもっともっと増やしていかねばならないと痛感した。
陽子線治療装置(1).jpg
陽子線治療装置(三菱電気製)
 この病院でもっとも特徴的な点は、陽子線治療装置を備えているところである。陽子線治療装置は全世界でも20ヶ所しか稼動しておらず、同センターは国内では5ヶ所目の導入である。導入費用は60億円余り(1/2国庫補助)とのことである。神奈川県立がんセンターでは、重粒子線治療装置の導入を検討している。陽子線と比較すると以下の点を指摘された。陽子線治療適応の患者は、がん患者全体の1/100程度、そのうち1/10が重粒子線の適応患者とのことである。即ち同センターの年間8000人余りの患者のうち、80〜100人程度が陽子線治療の適応患者、重粒子線の方が望ましい患者はそのうち10人程度とのことである。逆に言えば重粒子線でなければ治癒が見込まれない患者の数は、8000人のうち10人程度ということである。採算性の分岐点は400人/年とのことで、陽子線治療の患者数が年間150人程度の同センターは、陽子線治療についてだけ言えば、赤字を重ねているとのことである。しかし、陽子線でなければ、あるいは重粒子線でなければ治癒しない患者さんを思うと、より良い治療機器を導入すべきであるのは当然である。ただ、「(900万人口の)神奈川県であれば一つあってもいいだろうが、陽子線にせよ、重粒子線にせよ、がん治療全体のいくつもある中の一つのメニューでしかない。県としてがん対策を進める上での位置づけをしっかりと持ちながら導入しなければならない」(山口建総長)という厳しい指摘も受けた。陽子線にせよ、重粒子線にせよ、他の治療法では治癒が見込まれない患者さんに対して絶大な効果を持つこうした治療装置は、神奈川県としても喉から手が出るほど導入したい。しかし、行政として導入するに当たっては、費用対効果をしっかりと考えなければならない。神奈川県としても、今後取り組むべきがん対策全体をもう一度精査する必要があろう。いずれにせよ、「健康長寿日本一」を標榜する静岡県の真剣な取組みを見せていただいた有意義な視察となった。
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